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  スカイ・ポリス 〜国立特殊能力学園〜 


  4.  7班+1人集合



 
 「あんたねぇ、今更行かないなんて男の風上にもおけないゲス野郎ね。さっき、二言は無いと言い切ったでしょうが!」
 拝殿近くまで連れて行かれた青は、真っ赤になった耳をこすっていた。
「あいつはいけ好かないんだ! 一緒に三日間も過ごせるか!」
「あんたが受験に3度も落ちた理由が分かったわよ」
「何だよ……」
「あんたはね、自分勝手って過ぎるのよ。特殊部隊って言うのはね何よりもチームワークが大切なの、みんなとのスタート地点にも立てないあんたが、文句言うのは千年早いわよ、このクズ!」
「何だと〜〜〜〜、このドブス!」
 青は瑠華の前で拳を翳した。
「ふん。だから千年早いって言ってるでしょーーーーーーっ!」
 いきなり瑠華の拳が青の頬に当たり、青は外壁までぶっ飛んだ。
「痛てててててっっつ」
 青は瑠華の強烈すぎるパンチに、再起不能で立ち上がる事ができない。
 瓦礫がガラガラと崩れる音に、みんなが振り向いた。
「千年早いって、さっきから言ってるのに……」
 仰向けに寝転んだ青を、仁王立ちして瑠華は見下ろしている。
「もしかして、死んだ?」
 動かなくなった弟に、軽薄な笑顔を浮かべて……。
「うっせぇ、くそ女……痛てっ……。ドブス、パンチ力増しやがったな……」
「あんただって、ただで洞窟の案内するのは嫌だろうと思って、せっかく褒美にこれあげようと思ったんだけどな……」
 瑠華は首から下げていた大粒の月光石を、胸元から出して青の目の前でゆらゆらと揺らせて見せた。
すると、青は目を輝かせていきなり上半身を起き上がらせた。
「昔から、これ欲しがっていたでしょう?」
「ほ、ほんとか? 姉ちゃん!」
 顔には笑顔が張り付いている。
「”姉ちゃん”だなんて久しぶりに聞いたわ。あんたは何時だって私のことを”くそ女”とか”ドブス”とかしか言わないのに……」
「ねーねーねーほんとか? 姉ちゃん!」
「もう私の話なんて聞いちゃいないわね、あんた」
「行く! オレ一緒に行くよ。そして案内してやる!」
「現金な奴!」
「だってさーーーー、それ売ったら幾らになると思ってるんだよ! 家の一軒や二軒……」
 言葉を止めたのは、目の前に瑠華の拳が差し出されたからである。
「あんたね、これ売ってごらんなさい。殺すよ。これは母さんの形見なの、売ったら承知しないからね」
「分かった分かった! 分かったってばーっ、目の前で拳振りかざすの止めてくんない?」
「でもさ、もし、どうしてもお金が必要な時には……へへ」
「許さん!」
「でもさ、でもさ、命に関わるような時は……」
「まだ言うか!」
 瑠華が殴る振りをするので、身の危険を感じて青は後ろに下がった。。
「で、どうすんの? 一緒に来るの? 来ないの?」
「……それ本当にくれるのか?」
 しかし、青の目の輝きは衰えず、うっとりペンダントを見つめている。
「やる。でもチームは7班あって捕まえられる教官は3人だけ、その中の1人を捕獲できた場合だけよ、しかも期限は三日間だから捕まえられない可能性もあるの、かなり難しいと思う」
「でも、誰でも一人だけ捕まえたらいいんだよな」
「勿論、女に二言は無い」
「よっしゃーーーーっ、行く!」
 青はいきなり起き上がって俄然張り切りだしたが、そんな彼を尻目にほくそ笑むのは瑠華だった。
”単純な弟を持つと助かるわ”……と。


「話はついたかい?」
 莉空は微笑んでこちらに歩いてくる姉弟を迎えた。
「勿論よ。私たち仲良し姉弟だもの、ね青」
 瑠華は弟を見て微笑んだ。
「そーだよ兄ちゃん! 心配無いからよう。オレがいるからには1番取ってやるからな、なー姉ちゃん」
 白い歯まで見せて笑う青を見て、似た者姉弟だと梨子を含め周りの誰もが思った。
「あらら……、このふたりどうやら何らかの利害が一致したようだわ」
「怖いこの姉弟……なんなの? このふたりの不気味な笑いは……、切り替えが早いと言うか、なんと言うか……。シオはどう思う?」
 トオルが尋ねたが、シオは相変わらずの無表情でみんなを見ていた。
「オレのアームバンドには、その場所に来たら鮮明に映し出せる、ホログラム立体地図のソフトがインプットされている、あいつが役に立たない場合はいつでも放り出せるさ」
「何で早くそれを言わないんだよシオ、それがあればあいつを連れて行かなくても……」
「もの言わぬ地図より、現地に詳しい奴がいた方が何かと便利だ。だから黙っていた」
 それが何か? とでも言うように、無表情な顔を向けられてトオルは少したじろぐ。
シオと話すといつもこんな調子だ。
いつも何となく圧倒される。
「そ、そりゃそうだな、確かに」
 う〜ん、こいつとも話が続かないなあ……、などと不安になるトオルだった。
「あらアッシュ先輩!」
「よう瑠華! 今回はライバルだな」
「負けませんよ! 私たち」
「お手柔らかにな」
 アッシュはちらりと青を見た。
「あ、弟の青です。この辺のガキです。さ、頭下げて」
 無理矢理、青の頭に手を当て下ろした。
「やあ、頼もしいんじゃないの? こりゃやられたかな?」
「どうだか、足手まといにならなければいいんですけどね」
「さ、偵察はもういいだろうアッシュ。僕たちこれから青を交えてミーティングするから」
「はいはい。じゃ、お互い頑張ろうね!」
 そう言って手を振りながら、その場を後にするアッシュを見送って、莉空は自分の首の辺りに手を持って行く。
「油断も隙もありゃしないな、ほら」
 莉空はいつの間にか、制服の襟に着けられていた5ミリほどの超小型発信器を、みんなに摘んで見せた。
勿論、さっきアッシュが着けたものである。
「おお、敵もやりますね莉空先輩」
 梨子とトオルが声をあげて関心する。
「まああまり時間も無くなってきたから、みんなで自己紹介しようじゃないか。僕らは学園で顔は合わせた事があっても、お互いの事は良く知らないからね、瑠華は青にマイクをセットしてくれ、その間に自己紹介するよ。まず僕はリーダーの工藤莉空(リク)四学年、今回六学年生が参加していないのは、卒業試験の任務に就いているからで、その手助けに、五学年生がヘルプに就いている。で、僕ら四学年がリーダーとなる。僕の特殊能力は幻影術、記憶を操作する能力を使える。言葉では説明しにくいから、使う機会があれば分かってもらえるんじゃないかな、みんなの特殊技能もそうだね、だから任務中自分の能力を使えると思ったら言ってくれ。でもまあ今回は如何に早く追跡して、捕獲と言うことが一番に問われるので、特殊能力的な事より体力チームワークを試されると思うんだ。で、それはさっきも言ったように”如何に早く捕獲”に繋がる。勿論、これはそれぞれの評価にも繋がるので、みんなで力を合わせて頑張ろう。僕からは以上だ。じゃ、次は瑠華」
「私? そうねー、念術で物体を止めること……、それを少しは使えるかな?」
 青の腕に機械を取り付けながら、上の空で返事をする瑠華の、意外に消極的な返答に一緒に活動したことの無い、梨子とトオルは拍子抜けした。
しかし、それに気付いた莉空はクスリと笑った。
「えらく控えめだな。崩れ行くビルディングの崩壊を、止めることができるって言えば?」
「ええええーーーーそうなんですか?」
「そうねぇ……例えば、今みんなの動作を止めるとするじゃない? その隙に、動かないトオルを何発も殴ることができたりするわけよ」
 トオルが思わず瑠華から一歩下がった。
「怯えすぎだトオル、ははは。それに瑠華はメカに強いから頼りになるよ、じゃ次、梨子」
「えーと、私は今年二学年に進級する梨子です。特技は水を操ること。雨を降らせたり洪水を起こしたりできる能力と、今回このチームに入ったのはきっと*3.サイコメトリーの能力の二つを持っているからだと思います」
「すげえなぁ梨子も、じゃ俺、ナイガトオル。梨子やシオと同じ今年二学年に進級組みで、特技は植物を自由に操ることができることかな」
「じゃ、次はシオ」
「オレの能力はテレポート」
「噂には聞くけど、テレポートの能力を持った奴は少ないんだよね、今まで同じクラスには独りも居なかったよ」
 トオルが言った。
「そうだね、テレポーターは非常に少ない。しかもシオ程の能力を持った奴はそうそういないと思うよ」
「ねえねえ、それってどんな能力なのさ?」
 青の素朴な質問を、バカにしたようにトオルが呻いた。
「こいつ、だから3年間も受験に落ちてんじゃないの? 本当に瑠華先輩の弟なんですか?」
「うん。バカでごめんね」
 瑠華はにっこりと笑った。
「テレポートとは瞬間移動のことだよ。彼が念じた地点へ一瞬に移動できるんだ。そして、シオの凄いところは、彼は自分だけでなく彼と手を繋いでいるとか、タッチしている者、物体は総て移動できる……だったよねシオ」
 莉空がシオを見ると彼は軽く頷いた。
「へえすごいなぁ!」
 青が感嘆の声をあげる。
「じゃぁさ、じゃあさぁーー……」
「宇宙船のワープとは別物だ」
 シオは賺さず返事した。
「んーーー? 今、オレの心を読んだか?」
「ふん。単純バカの考えそうなことだ」
 シオは冷たい目をして突き放した。
「何だとーーーーっ」
 腕をぶんぶん振りかざす青を、瑠華が後ろから羽交い締めにした。
「放しやがれ瑠華!」
「じゃ、青。自己紹介してくれるかな?」
「いーっす! オレは重形青十三歳、特技はエアーボード、それから……」
「性格はアホでーす。もういいわ青、時間無いから」
「こら! 最後まで言わせろよ」
「まーまー、ごめんね青本当だ。そろそろ集合らしいよ、みんな、木教官が出てきたから行くよ」
 莉空が荷物を持つと、みんなの顔付きが変わり、各自荷物を手にして急いで莉空の後に続いた。
 青は彼等の中に入ると、見るからに優秀そうな数十人の学生達に圧倒された。
彼等はそこに立っているだけで、子供とは言え戦闘態勢のオーラが漲《みなぎ》っていた。
青は一人だけ私服で原色の緑の服を着ていたし、一人だけ妙に脱戦闘モードオーラを発していて、当然の如く浮きまくっている。
おまけにひとつ大きな欠伸をして、後ろから瑠華に頭を小突かれた。
「あんたねぇ、みんな真剣なのよ。遊びじゃないんだからね。」
「わかってるって……」
 そう言いながら、鼻の穴に指を持って行こうとしたところを、パシッと瑠華に払われた。
「ーーたく! 分かってないじゃない!」
「痛ってえなぁ! 何すんだよーーーっ」
「あんた今、鼻を穿《ほじ》ろうとしたでしょ!」
「……しねえょ……」と言って、頬をポリポリと掻いた。
 相変わらず総てを見透かす我が姉が、青は少しばかり恐ろしかった。
「我ながら本気で心配になってきたわ……、あんたを連れて行くのが凶と出るか吉と出るか……」
「はははははは、姉ちゃん大丈夫だよ。任せときな」
 にっこり笑う青の顔を見て、度胸だけはいい弟がどこまでチームに付いて来れるのか、見てみたいものだと思った。
 広場では木教官を前に各チームごと、順番に7班が勢揃いしていた。
「さあ、準備はいいかい?」
「はい」
 みんなが一斉に返事をした。
 木が時計を見て30秒ほど経っただろうか、手を振り上げた。
「開始!」
 その声を合図に、各チームはそれぞれ広場を後にした。









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