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  スカイ・ポリス 〜国立特殊能力学園〜 

   ― 学園の怪人編 ―
   30. 超能力学園通り

 

 日曜日とあって寮のエントランスには、オートモービル待ちの行列が出来ていた。
 出かける際は基本制服が推奨されたが、別に私服でも良いのでバラバラの姿でそれぞれやって来たオートモービルに乗り込んでいる。
「シオも一緒に行けばいいのにさ」
「あいつは朝方までゲームして遊んでたから眠いんじゃないか? お負けに、お前に早くから起こされてさ……」
「ゲームって?」
「あれ? お前寝てたっけ? 昨夜、俺たち遊んでたんだ。リアル・スコープを掛けて敵と対戦するやつ、体術の練習にもなるし、他の部屋の奴らと対戦したりして、けっこう面白いんだ。身体を動かすからリビングでやってたんだ、俺とタイガは途中で抜けたけどな」
「何で起こしてくんないのさ」
「対戦形式で三対三で人数は丁度だ合ってたしな、起きてたらお前呼ばなくても来てただろう?」
「ちぇっ」
 その時、目の前にオートモービルがするりと現れて、青はいそいそと中に乗り込み、続いてタイガ、トオルと乗車して扉は閉まった。
「おれさあ、そう言えばタイガの能力って見たことないんだよな、トオルのは見たけど」
「知ってるだろう? タイガは炎を操るんだ」
「自在に?」
「そう、自在に」
 そんな話をしていても、当の本人はそ知らぬ顔して窓の外を見ている。
「まあ、そうそう機会は無いだろうけど、訓練が同じだったら見せてもらえ」
「すっげぇなぁ、炎かぁ……、そう言えば、この前の訓練にはタイガは来てなかったのか?見なかったような気がするけど」
 タイガはチラリと青を見て答えた。
「あの時は上級生の卒業試験の手助けに行ってた」
「だよな……」
「ほら、着いたぞ、通称、”能力学園通り”学校関連の品はここで何でも揃うんだ」
 オートモービルがビルの谷間で静止すると、扉がシュッと軽い音を立てて開き、トオルが先立って降りて行く。
 確かに”能力学園通り”の異名らしく、ビルの谷間には店がずらりと並んで、学生たちで溢れていた。
 中には教職員、或いは技術者関係風のお堅いスーツを来た男性が、大きな荷物を抱えて歩く姿も見られた。
 石畳は緩やかに登っていて、店頭に並ぶ商品は、学校関連の品だけではなく、甘い菓子や果物と言った、食べ物から、普段着る衣服、靴屋や鞄と言った、あらゆる物が揃っていた。
 この前に見た室内のショッピングセンターに似てる店構えではあったが、ここは外である分開放的で、もっと専門的な物があるようにも思えた。
「あ、エアー・ボードだ」
 青はウインドウの中に飾ってある緑色したエアー・ボードを見て声を上げた。
 その横には、同じ品をコンパクトに畳んで、如何に軽量になるかを証明していた。
「お前は新しいの学園から貰っただろう?」
「うん。まだ使ったこと無いけど」
「今の所はそれで十分じゃないか? お前まだ空中で乗ったこと無いだろう?」
「うん」
 青は素直に頷いた、エアー・ボードが空中で乗れる事自体知らなかったからだ。 
「じゃあ、あれで練習して、乗りこなせるようになったら、きっと物足りなくなる。その時に買い換えたらいいんだ」
「エアー・ボードって授業で使うのか?」
「基本的には使わないかなぁ……、訓練のときに、ほら、この前のような時に使うんだ」
 二人が立ち止まって話しているうちに、タイガはどんどん前へ進んで行く。
「待てよタイガ」




 DS6は朝になっていつもの時刻、構内の警備任務に就く為に、出て行ったので、現在部屋に居るのはシオ独りだけだった。
 ルームメイトが出す日常の騒音が全く無い、誰も居ない室内は静かでいつもよりやたら広く感じられた。
 青がそのままにしてある散らかし放題の衣服や、積み重ねられた教科書などや、日々繰り広げられる騒動に、慣れてきている自分がいる事に、驚きつつも順応し始めた自分がシオは可笑しかった。


 シャワーを浴びて着替えをし、ブレスレットを嵌めようとして気が付いた。
「あ……」
 そうなのだ、これを持っていたらテレポートできない。
 かと言って、持たないで外出も万が一の事を考えると、少しばかり不安だ……、どうしたものかと考えあぐねていた時、来客の知らせが入った。
『ID101002、シャーロット・V・バーディーが来ました。ドアを開けますか?』
「ああ」
 程なく入って来たバーディーは、勉強部屋にいたシオを見つけて寄ってきた。
「おはようシオ」
「珍しいな、お前がここに来るなんて、どうしたんだ?」
「ブレスを入れるケースを持って来たんだ。これが無いと何かと不便じゃないかと思ってね」
 そう言って、バーディーは自分の胸ポケットから、金属性の小さく平べったい容器を取り出した。
「そうだよ、実際困っていたところなんだ」
 シオの言葉をあぐねて、バーディーは頭を傾けた。
「”能力通り”の店で、あいつらと待ち合わせしてんだけど、これを置いていかないとテレポートできないから、どうしようかと悩んでたんだ」
「じゃ、丁度良かった」
「移動の際はケースい入れとくといいよ」
 バーディーは特殊加工でできた小さな箱を開けて、ブレスを中に仕舞って見せた。
「ほら、こうやって、ポケットに入るサイズだよ、でもこのケースは邪魔だから、今度はブレス自体を折りたたんで持ち運びできるように、研究してるからもう少し待ってね」
「助かるよ、バーディー」
「でも、君は確か外出禁止じゃなかったんだっけ?」
 何気ないその言葉に、シオは落胆したようにバーディーを見た。
「バーディー……」
「君に泣きつかれるのは初めてだな」
 バーディーは、微笑んだ。
「約束してんだ」
「そう言えば、この部屋は誰も居ないんだな……、君は一人じゃ危ないよ」
「だから、学長には黙っていてくれ」
「止めても行くくせに……。しょうがないなぁ……、でも、早く帰って来てよ。君に何かあったら大変だから」
 そう言って、バーディーは部屋を見渡した。
「青も居ないよ。店にいる」
 バーディーの顔が曇ったのをシオは見逃さなかった。
 誘われなかったことに、胸を痛めたのだろうかとシオは思った。
「お前も行くか?」
「え?」
「青もいるし」
「でも……、僕は……いいよ」
「何遠慮してんだ、行きたいなら行きたいと言え、そしたら連れてってやる」
「でも……」
 躊躇するバーディーに、業と意地悪してカウントする。
「5、4、3、2、……」
「行く! シオ、僕行きたい!」
 薄っすらと涙ぐむバーディーの瞳を見て、シオは微笑んだ。
「お前は相変わらず泣き虫だな」
「泣いてなんかいない」
 そう言いつつ、大粒の涙がポロリと零れた。
「そして意地っ張りだ」
「違う!」
 シオはフッと優しく笑って、バーディーの腕を掴んだ。
「行くぞ、あいつの鼻先に降ろしてやる、しっかり立ってろ」
 シオが不適にニヤリと笑った次の瞬間、部屋は静寂に包まれた。
 



                   
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