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  スカイ・ポリス 〜国立特殊能力学園〜 

   ― 学園の怪人編 ―
   28. C・V・バーディーの父親
 

 夕食を終えた青たち四人が部屋に戻って来たら、扉の前に完全武装体のXーDS6が待っていた。
 フェイス部分だけが映像で、と言っても殆ど人間が入っていると間違えそうなほどリアルな映像で、ボディはメタルのシャンパン・ゴールド色で、普段よりひとまわり以上大きくなっていて、武装体の強靱そうな様子に青はしきりに関心していた。
「やあ、DS6、今晩から見張りしてくれるんだって?」
 トオルが尋ねた。
『はい。お任せください。青君の補習授業が終わって、皆さんがお食事に行かれたら、武装体になってこちらに戻って来ます。そして、朝までしっかり見張りますので、安心してください』
「助かるよ、物騒だからね。それと聞いたかい? バーディーが能力を無効にする物質でブレスレットを作ったってこと」
『先ほど、教員室にサンプルを持って来られて説明されてました』
「今日、シオはそれを貰って嵌めて寝るんだよ、だから彼にしろ、俺たちにしろ、その物質の半径二メートル以内に入ると、能力が使えないん」
『分かりました。気をつけておきます』
「よろしくね、6」
 DS6は微笑んで、みんなの後に続いて部屋に入って来た。
 そしてリビングの一角に立ち止まったまま、動かなくなった。
「ねーねー、そこにずっといるの?」
『はい。こちらで待機します』
「立ったままで、疲れないのか?」
『機械ですから大丈夫ですよ、青くん。質問されれば答えますけど、それ以外はセーフモードで管理してます』
 DS6は青の素朴すぎる質問に、にっこり微笑んだ。
「頭にあった箱のような物が、どこかに入ってんのか?」
『記憶メモリーのことですね、ええ、この上に入るのです』
 そう言って、DS6は青に少し俯いて頭の上にある、小さなボックスの扉を開いて見せてくれた。
『私たちは必要とあらば、何時でもこの中に入って実装体として、活動できるのです』
「すっげぇ」
 キラキラした瞳は更にDS6の実装体に移って、腕にある突起物を指して尋ねた。
「ねぇねぇ、それってやっぱ銃だよな?」
『これですか? はい、連射可能なレーザー銃です。腹部には小型爆弾も数個入ってます』
「すっげぇ!」
 しきりに感心して、そこから動こうとしない青を、バスルームに行く途中のトオルが見かねて言った。
「青、明日の授業の準備をしておけよ、おまえはいつも朝バタバタするから、夜のうちにちゃんと用意しとけ!」
「わかってるって!」
 今度はシオがキッチンに入って来た。
『おや、シオくん、その顔はどうしました?』
「何でもない」
 それだけ言うと冷蔵庫を開けて飲み物を取り出している。
「瑠華に殴られてやんの」
『おや……』
 飲み物を口に運ぼうとして、傷口に沁みたのかシオは顔を顰めた。
「あいつのずる賢いの教えといてやるよ、あいつはさあ、髪の毛あんなに長くして女の子らしくしてると、男が殴らないと踏んでるんだ。実際、喧嘩して何度殴ろうと思ったか知れないおれだって、あの長い髪を靡かせながら目の前に立たれると、殴れないもんなちくしょう!」
 確かに瑠華は殴れないと思った……、でも、どこから見ても女だけどな……、そうシオはぼんやりと思った。
「しかも、いちいち腹が立つのは、あいつの言うことが、だいたい本当のことで、反論できないんだ、おれはそれが悔しい!」
 確かに青の言うとうりで、今日殴られた理由もそこにあって、高慢ちきな顔が浮んでムカついたが、瑠華も自分の事をそう思っていると思うと、シオは口角を少し上げて微笑んだ。
「うぇ、何笑ってんだよ、お前の笑顔、瑠華と一緒で不気味だ……」
「とっとと、部屋に行って明日の用意しやがれ!」
「ちぇっ、忠告してやったのに、じゃねDS6」
『はい』
 怖い顔のシオに疎まれて、笑いながらDS6に挨拶をすると、青はそそくさ勉強部屋に向かった。




 一方、その頃学園の会議室では、 円卓の多きなテーブルを囲んで、学長は元より先生方、情報局員、スカイ・ポリス本部部長が勢ぞろいして会議が行われていた。
 勿論、議題は二度に渡る今回の事件の事だった。
「前回の事件と、今回の男の関連性は何か分かったのでしょうか?」
 オロン教頭がスカイ・ポリス本部長に尋ねた。
「既に、こちらで検査したDNAにおいて、第四のDNAを調べた結果、誰にも該当しないことは分かった。今の所、前回の男との関連性が掴めず、何とも申しがたいのですが、こちらに管理してあった先生方のDNAサンプルが使用された事は、大変許しがたい犯罪で、これを管理していたと思われるスミエ・グラを拘束する寸前で、逃亡を図られました。その事実から、どうやらスミエ博士が関与したことは拭えない事実となりそうです」
 円卓から、呻きとも嘆きとも取れる声が漏れた。
「ご存知のように、スミエ博士は五年前に失踪した、シャーロット・V・デービッドの弟子でした、シャーロット博士が実験とは言え、偶然、培養して出来た”息子”シャーロット・V・バーディーは、”奇跡の産物”或いは”悪魔の申し子”として、こちらに生存しておりますが、本来なら彼は国家警察の管理下で厳重に管理される所を、早瀬学長の好意により、ここに置いてもらってます。しかも、彼の能力は桁外れの天才で、研究室においては多大な能力を発揮されているとお聞きしましたが、学長、それでよろしいですか?」
 本部長は、言葉を切って学長に同意を求めた。
「ええ、わが国に置いて、特殊能力者による犯罪の多発に置いて、武器開発は必須です。S・V・バーディーは類稀な能力で、若干十三歳にしてここ数年の中で、あらゆる武器を開発してきたのは事実です。皆さんがご心配のように、父親と同じくして重犯罪にも匹敵する、人類創造の扉を開けるような事があれば、彼の後見人として私が処罰することを宣言しましょう。しかし、現在、彼の才能は武器開発と言う、この国に最も必要な不可欠な分野に置いて発揮されております。そして、こちらを見てください」
 学長はバーディーが作り出した青いブレスレットを、皆の前で翳した。
「こちらは、先ほどバーディーが持って来た物ですが、この物質から半径二メートル以内の能力者は、能力が使えない筈です。どうか、皆さんお試しになってみて下さい」
 円卓の能力者達から低いどよめきが漏れた。
 彼等がそれぞれブレスレットを手に取り、試してみるが本当に誰も能力が使えなかった。
「ほう……、これは素晴らしい!」
「水硬石で出来た手錠が、捕まえた者意外に効力を成さないのに比べて、こちらの性質はこの物質の側にあるもの全てに対応できます。従って、リグラス・シオのようにテレポーターから狙われている者に対して、一緒に連れ去る事が出来ないと言う多大な効果が発揮されます。その他、敵に気づかれず、これを側に置くことができたら、相手の能力を封じることができます」
「学長、そうすると、これはそのC・V・バーディーが作り出したと言うのですか?」
「ええ、そうです。若干数人の学生達も鉱石分析を手伝ったようですが」
 学長はバーディーを国家警備局の監視下に置くと言う意見も多々ある中、それがいかにナンセンスな話だと腐食すべくようにきっぱりと言った。
「最早、彼は研究室において必要不可欠な人物となり得ます」
「うむ……」
 本部部長は同意したかのように、頷いた。
そこで、今度は教頭が話を続けた。
「では、少し本題を逸れてしまいましたが、現在逃亡中のスミエ・グラについて報告をさせて頂きます。ご存知のように彼はシャーロット博士の弟子でした。博士が失踪して培養技術が世に知らしめされてから、研究室がある東の塔は完全封鎖されていましたが、一昨日の夕刻に生徒から東の塔で何かの音がしたと言う報告がありましてX−DD7が調べた所、封鎖されていた筈の研究室には何者かが侵入していて、しかも、床には最近培養液が使われたと思われるチューブの容器が割れて、そのガラス片が散乱しておりました。それは、片付ける事無く堂々と痕跡を残しておりまして、きっと培養が終わってその人物が完全なる者になっただろうと言う事を示しているのだと思います。博士の培養技術も完全隠蔽した筈でしたが、スミエ・グラは博士の側にいてその技術を密かに受け継いだか、または何らかの形で独自に研究していたと思われます」
「ひとつ質問があるのだが?」
「はい、部長どうぞ」
「教授方ののDNAを持ったその男は、凡そ膨大な力を秘めておると思うのだが、昨夜生徒の前に現れた男が、テーブルをぶつけられただけで、すごすご帰って行ったと言うのはどうにも信じられないのだが……」
「そうですね、確かにその通りです。唯一の不可解な行動です……、それについては何の報告も出来なくて申し訳ありません……」
「恐らく、まだ時期で無かったんだろうとは思われるな、それは、奴らがまだここを出ていないという事実からも立証されているだろう。一体どうやってここから出て行く計画をしてるのか謎ではある……、がしかし、きっとそれと関係があるのではないだろうか」
 そうして、再び円卓は重苦しい空気に包まれた。


 

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