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  スカイ・ポリス 〜国立特殊能力学園〜 

   ― Prologue ・秘められた能力編 ―
   12. アイスブルーの狂気




「わぁぁぁぁああああああああああーーーー」
 
 青の叫び声は、天空において風にかき消されて行く。
「早くボードに乗れ!」
 立場は一気に逆転し、シオはいつの間にか自分のエアーボードに乗っており、腕一本で青を捕まえていた。
 前後上下の無い浮遊感は、青の身体と心を恐怖で竦ませたが、シオに支えられてやっとの思いでボードに躙(にじり)り上がる事ができた。

「おまえ、エアーボード持っていたのか?」
「オレたちのエアーボードはコンパクトに終えて、ポケットに入るんだ。移動する前に掴んで空中で広げた」
 あの爆風に身体が舞い上がった一瞬で、全てを理解したんだろうか?
だとしたら凄すぎる……、今もかなり冷静な顔して、落ちないよう青の腕をしっかり掴んだままだ。
「……で、でも、あり得ない! なぜ地上じゃいけなかったんだよ! なんでここなんだ?  し、下に街が、海が見えるぞ!」
「どこに敵がいるかわからないからな」
「だ、だ、だけど……よう……」
 黙ったまま長い髪を風に靡かせながら、平然としているシオは、汚れきってよれよれの青を見ていた。
「……おまえ何でそんなに、小汚いんだ?」
「てっめー、殺されたいか!」
 拳をシオの目の前に翳そうとしてバランスが崩れ、落ちそうになった青の胸倉をシオが掴んだ。
「ひぃぃぃぃぃぃ、……あ、危ね……」
「暴れるな、落ちるぞ」
 こんなに風が吹いているのに、青の額から嫌な汗が流れた。
 風がヒューヒューと音を立てて、耳元を掠めてゆく。
 足元を見ると気を失いそうで、青はじっとシオの瞳を見ていた。
 アイス・ブルーの、引き込まれそうに綺麗な瞳の色を……。
 ここで落下する恐怖より、シオの目に宿る狂気を感じることの方が、まだマシなように思われた。
 まあ、どっちもどっちだが……。
 そんなことを青が思っていると、いきなり、シオは顔を顰めた。
「……い、痛ってーーーーーーっ」
「おまえ、何だよ。いきなり」
「なんでオレの体中、こんなに痛いんだ? どこもここも痛ってーーーーーっ!」
 眉間に皺を寄せながら、シオはそう叫んで前に俯いた。
「そりゃ……話せば長い話しになるんだが……って、ここから降ろしやがれ!!! オレは高所恐怖症だ!」
「……」
 恐い顔して、急にシオが黙った。
 長いプラチナブロンドがサラサラ風に揺れている。
 何だよ、どうしたんだ? 
 この酷く恐怖にも似た沈黙に……、青は心臓がざわめいた。
 シオはさらに下を向いたかと思うと、暫くしてゆっくりと起き上がり、そして真っ赤な手の平を青の前に翳した。


 ぎょえーーーーーーーーっ! 


 青の顔から血の気が失せる……。


「どうやら撃たれたようだが……」


 恐る恐る下を向いた青は、シオの右太ももの制服が破けて、その皮膚から血が滲み出ているのを見ると、気分が悪くなってきた。
「……う、う……撃たれてたのか? おまえ……」
 あらら、いつの間に……、気がつかなかったよ……。
「……どういう事だよ?」
 アイスブルーの瞳は、容赦なく冷たい光を宿して青を見ていた。
 2000メートル上空で、しかもこの状況、どう返事したものか青は考えていた。
 こいつなら、気に入らない答えひとつでここから突き落としかねない。
 青は身震いした。
「おまえ、綺麗な顔してるよな」
 自分でも思ってもいない答えが口を突いて出た。
 な、何言ってるんだオレは!!! 
 青は思考回路が停止しそうだった。
「殴られたいか? おまえ」
 目を細めてシオが言った。
「ちょーーーと待て! 思い出せよ! おまえいきなりあのテレポーターに洞窟で眉間突かれやがって! オレがどんな思いでおま……」
「思い出した……」
「だろ? だろ? あれからおまえを守るために、オレがどんなに苦労したか……、思い出したろ?」
「ああ、おまえオレのこと”鬼”だとか、”悪魔”だとか言ってたよな……」
「そっちかよ! そこ思い出すか? この状況において!」
「眉間も痛いぞ」
 シオが額に手を充てて、青を睨んだ。
「何かしただろ……」
「な、何をさ……」
 青は冷や汗が出るのを感じた。
「まさかとは思うが”デコピン”とか……」
「……」
 こ、こいつ鋭すぎる……、青は2000メートル上空で泣きそうだった。
「バカの考えそうなことだ……」
「それより、早く下に降りようぜ、木先生が心配するぞ。目前でいきなり消えたんだから」
「木先生は知ってるさ、オレが逃げたことくらい。それより吹き飛ばされた時に見た。テレポーターの仕業かこれは……」
「そうだ、全部あいつらだよ」
 

 シオは指に着いた、自分の血を舐めた…… 


 目が笑って無いので、青は背筋が凍る思いだった。


 こいつはいったい、何を考えているのだろう……。
 明らかに、目が戦闘態勢だぞ……。


「行くぞ!」


「え?」
 

 次の瞬間、青はそこからシオによって連れ去られた。





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